「米国から逃げ出し始めた中国人 ニューヨークのチャイナタウンが消滅の危機に」という記事が載っていた。いつものチャイナタウン紹介はお休みして、今回はこの記事に注釈をつけてみたい。
背景となる知識
まずニューヨークのチャイナタウン事情を知らないと本当の話が見えない。
ニューヨーク市には中国人居住区が3か所ほどある。そのうちニューヨーク市当局がチャイナタウンと呼んでいるのはマンハッタン区にあるものだ。
マンハッタンの外にあるほかの居住区はフラッシングやサンセットパークなどと地名で呼ばれることが多い。ただしややこしいことにフラッシングなど他の中国人居住区も「チャイナタウン」と呼ぶことがある。
チャイナタウンの人口は減少しているのか
この記事、「人口が9%も減少したNYのチャイナタウン」とある。私もこの話題は前にも書いた。要約すると「不法移民が多いので人口が少なく見積もられてはいるが、マンハッタンのチャイナタウンは人口が減少していると考えられる」という内容。
ただし、これはマンハッタンのチャイナタウンだけに限った話で、NYにある他のチャイナタウンは人口が増加している。地元のテレビ局NY1の分析は、中国人住民がマンハッタンのチャイナタウンからフラッシングなど他のチャイナタウンに移動しているとしている。
もう少し詳しく見てみよう。Analysis: NYC 2000 to 2010 demographic changeというCenter for Urban Researchの資料がわかりやすい。一番下に地区別・人種別の人口動態統計がある。アジア人人口の多い5地区は以下のとおりだ。
地域 | 区 | 2010年のアジア人人口 | 10年間の増減 |
---|---|---|---|
Flushing | Queens | 49,830 | +37.0% |
Elmhurst | Queens | 38,699 | +17.9% |
Sunset Park | Brooklyn | 37,281 | +61.8% |
Bensonhurst West | Brooklyn | 31,917 | +57.0% |
Chinatown | Manhattan | 30,559 | -15.2% |
NY1の分析と合致しているのがわかるだろう。ちなみにFlushingとSunset Parkは上で触れたが、ElmhurstとBensonhurstは新しくチャイナタウンができているエリアだ。
そしてニューヨーク市が出しているまとめも見てみよう。Population Growth and Race/Hispanic Composition(PDF)という資料によれば、2000年のアジア人口はニューヨーク市全体で780,000人。それが2010年には1,028,000人。32%増えている。
アジア人全体での統計しか出てこないのが残念だが、ニューヨーク市全体で見ると中国人の人口は減っていない。ニューヨークの一地区にすぎないマンハッタンのチャイナタウンの人口が減少したところで中国人がアメリカから逃げ出しているように捉えるのは早とちりである。
ただし
マンハッタンのチャイナタウンは労働者階級が住むには高すぎる。さらに古い格安住居が少しずつ建て替えられている。なのでチャイナタウンに住む中国人は減少傾向を続けるだろう。もっとも商業地としての性格はなくならないだろうから、街の規模は当分現状が続くものと思われる。
そして、統計情報は見つからなかったものの、この記事にあるとおり近年の米国の不景気と中国大陸の好景気で一部の中国人、特に富裕層が中国に戻る傾向があるのは実感している。
このブログの将来は?
チャイナタウンはなくなるかといえば答えはノーですが、もし万が一チャイナタウンがなくなることがあれば、ロシアンタウン濃厚ガイドになりますのでその際はよろしくお願いします。
写真は中国。
私はリトルイタリーがなくなるのではないかと思っていました。どんどん進出していませんか、中国人の方々、リトルイタリーへ。
返信削除ブライトンビーチ情報になるのでしょうか、ロシアというと…?いいですね~。いっそのこと両方ってのは如何でしょう?
ぽりんさん
返信削除不動産の広告を見ていると、明らかにチャイナタウンの住所なのに「リトルイタリー地区」と書いてあるものを見つけたりします。10年前はリトルイタリーだった場所なのかもしれません。笑
ロシアンタウンはブライトンビーチが代表格ですが、あとNJに点々とあります。イクラの量り売りや格安キャビアなど魅力的な話題が多いのでぜひ書きたいところです。でも言葉に自信が……。
ロシアンタウン濃厚ガイドもやって欲しいです。
返信削除ロシアンタウンは濃厚なのですが健康的すぎる面があって、そのあたりで食指があまり動きません。ロシア人は好きなんですけど。
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